癒やしのフリーランド

ひとこま写真と日常の随感

灯篭流し


   灯篭流し
 
 親戚の新盆で寺に行った
 夜中の寺は足下がおぼつかない
 本堂の高い梁(はり)から下がった黄金色(おうごんしょく)の灯りの下で
 大勢の檀家や親戚が集まり 僧侶の経を聴く
 大きな鈴(りん)をけたたましく打ち鳴らし
 僧侶の読経の声は延々と続く
 名前を呼ばれたら 喪主が順次に焼香をする
 喪主が終わると 次は親族だ
 夏の堂内は
 扇風機を回しても汗が滲み出る
 新盆の法会は半時たらずで終わった

 そのあとは 境内に出て
 小さな灯篭を池に浮かべ 
 みんなで掌を合わせて 灯篭流しのならいごとをする
 暗い水面に 蛍火のようなろうそくの灯りが 
 ちらちらと揺らめいて流れていく
 御霊(みたま)流しにはどんな意味があるのか  
 御盆に迎えた精霊を親族が弔ってから送り返すことだという
 それなら その川や 海や 池の向こうには
 きっと 極楽浄土があるに違いない
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 その極楽浄土から迎えて 御霊を供養し
 また極楽浄土に送り返すのだとしたら
 なにやらおかしな話だが
 年に一度の夏の夜に 遺族と精霊を導き会    
 わせるために
 発明された祈りのような行事だと考えれば
 それは いつの時代にも
 人々に幸せになってもらいたいと切願する
 昔の先人たちの 愛の知恵だろう

 そんなことを想いながら
 夜道を帰路に着いた


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