癒やしのフリーランド

ひとこま写真と日常の随感

霧雨の朝


  霧雨の朝

 霧雨の朝 山塊は雨の向こうに眠り
 谷川のほとりに 一本の木いちご
 みずみずしい葉 赤く光る実を 
 ぼくらは よく摘んだものだった


 笹のしげみのかげの 速い流れのとどろきを
 木いちごの秘密のように
 小さな魂で感じた あのころはよかった

 友が ばらのしげみでけがをしたのも
 あのころだった
 指に滲んだ血の なんと新鮮だったことだろう
イメージ 2
 あのように すべてが傷つきやすく
 こわれやすかったころは よかった

 紅いくちなしの実や 黄色いシュロの実が
 なんと すばらしい宝物だったことだろう

 ぼくらは むくどりの巣を見つけ
 椎の実を落とし
 しげみの中に やわらかいねぐらを作った

 あのように すべてが傷つきやすく
 すべてが 夢のように織られ
 すべてが 真剣だったころはよかったイメージ 1
                    
 霧雨の朝
 ぼくは 今日も
 谷川のほとりにいる




(若いころに書いた詩のようなものです)

(イラストはJustSystems製品につき複写禁止です)