霧雨の朝
霧雨の朝
霧雨の朝 山塊は雨の向こうに眠り
谷川のほとりに 一本の木いちご
みずみずしい葉 赤く光る実を
ぼくらは よく摘んだものだった
笹のしげみのかげの 速い流れのとどろきを
木いちごの秘密のように
小さな魂で感じた あのころはよかった
木いちごの秘密のように
小さな魂で感じた あのころはよかった
友が ばらのしげみでけがをしたのも
あのころだった
指に滲んだ血の なんと新鮮だったことだろう
あのころだった
指に滲んだ血の なんと新鮮だったことだろう
あのように すべてが傷つきやすく
こわれやすかったころは よかった
こわれやすかったころは よかった
紅いくちなしの実や 黄色いシュロの実が
なんと すばらしい宝物だったことだろう
なんと すばらしい宝物だったことだろう
ぼくらは むくどりの巣を見つけ
椎の実を落とし
しげみの中に やわらかいねぐらを作った
椎の実を落とし
しげみの中に やわらかいねぐらを作った
あのように すべてが傷つきやすく
すべてが 夢のように織られ
すべてが 真剣だったころはよかった
すべてが 夢のように織られ
すべてが 真剣だったころはよかった
霧雨の朝
ぼくは 今日も
谷川のほとりにいる
ぼくは 今日も
谷川のほとりにいる
(若いころに書いた詩のようなものです)
(イラストはJustSystems製品につき複写禁止です)