癒やしのフリーランド

ひとこま写真と日常の随感

道 草

 
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 雨続きだった天候が少し回復した。久しぶりで庭に出ると、垣根の外の路を何か黒いものが動いた気配がする。何かと思い覗いて見ると、紺色の制服を着た小学校低学年の男の子が、こちらを見て「こんにちは」と頭を下げた。そこでこちらも、挨拶を返す。きょうは水曜日なので、学校が早く終わったのだろうか。「どこの子だろう?」ふだんは、あまり見かけない子だった。

 通りの電柱の脇を抜けて、田んぼの畦と宅地の仕切りの狭いコンクリートの上をてくてくと東側の宅地のほうへ歩いて行ったが、途中の畦に下りて何かを探している。珍しい植物か、虫でも見つけたのか。向こうへ行くんだから奥の家の子なのか。子どもは成長が早いから、小学生になっているのに気がつかなかっただけなのかもしれない。それにしても、数年前に引っ越してきた新宅ではあるが、すぐ近所の子の顔を知らない昨今の自分の情況は情けない。

 眺めていると、ふと自分の子ども時代を思い出した。その頃は近所といえば誰もが知り合いで、大人から子供まで知らない人などは一人もいなかった。子供は学校から帰ると鞄など畳の上に放り出して、みんなして遅くまで表で遊びまわったものである。夕方になると「ごはんよ!」という親の声がどこかから聞こえてきて、それでみんな遊びを止め、それぞれの家へ帰ったのである。

 少なくとも自分の場合、小学校の間は、予習・復習などの勉強をした憶えは全然なかった。第一、机も最初はリンゴの空箱で、そのうちちゃぶ台が代用になり、本物の学習机を買ってもらえたのは、たしか小5の時だったと思う。それも親がかなり無理をして買ってくれたように覚えている。それで絵を描いたり、夏休みの宿題をやったりはしたが、それでも中2まではほとんど勉強なるものはしなかった。

 家のそばまで帰りながら、ひとり道草をして遊んでいるその小さな男の子を見ていると、なぜだか昔の自分を思い出して、今昔の世相の違いとともに、ひととき慨に耽ったのだった。
 
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