ホトケノザ(三階草)
ホトケノザ(三階草)
春の道端の草むらの中にふつうに頭を出して咲いている。シソ科の植物で、葉が蓮華座のようだからホトケノザと呼ばれている。ほかにも、葉が3層になっているからサンガイグサともいうらしい。レンゲソウのような色の可憐な花が付いている。春の七草のホトケノザとは別種で、七草はキク科のコオニタビラコ。タンポポのように拡がった葉から茎を伸ばして黄色い花を付ける。
そういえば、子どもの頃は春の野原に雑草がいっぱい咲いていた。小川が流れて池があって、そのあたりにスミレ、タンポポ、レンゲソウ、ホトケノザ、カラスノエンドウなどが混じり合って咲いていた。歌にある「春の小川」そのものの風景が拡がって、川にもドジョウやフナやメダカがいっぱいいた。あちこちに桃の花が明るく咲いて、空は澄み切って、今はあまり見かけなくなった早春の夢のような景色。うそのようだが、昔はほんとに、あんな世界もあったんだ。
子どもの眼にはことさら、そんな風に見えたのかもしれないが、まぎれもない現実の風景だった。
大人になって年齢を重ね、社会も発展したので、生活や物資は比較にならないほど豊かになったが、そのような風景は逆に失われてしまった。どちらがよいのか自分には判らない。ただ、取り戻せないが…ひどく懐かしく感じられるのである。